スイッチングハブ 完全解説 🔌
ネットワークの「賢い交通整理役」を、仕組みから理解しよう
1. ネットワークの基本構造を整理する
複数のパソコンや機器を接続してデータをやり取りする仕組みを LAN(ローカルエリアネットワーク) という。 このLANの中で、機器同士を物理的につなぐ中継装置が ハブ(Hub) だ。
ハブには大きく2種類ある:
| 種類 | 正式名称 | 動作 |
|---|---|---|
| 古いハブ | リピーターハブ | 受け取ったデータを全ポートに流す |
| スイッチングハブ | レイヤー2スイッチ | 宛先を判断して必要なポートだけに転送する |
現在使われているのはほぼ100%スイッチングハブだ。
2. MACアドレスとは何か
スイッチングハブが「賢く転送」できる理由は、MACアドレスを使うから。
- MACアドレス(Media Access Control address)とは、ネットワーク機器のNIC(ネットワークインターフェースカード)に製造時に割り当てられた固有のID
- 48ビット(6バイト)で構成され、16進数で表記される
例: AA:BB:CC:DD:EE:FF
↑前半3バイト = メーカーID(OUI)
↑後半3バイト = 機器固有番号
- IPアドレスが「住所(論理的・変更可)」なら、MACアドレスは「マイナンバー(物理的・基本固定)」に相当する
- スイッチングハブはこのMACアドレスを使って転送先を決める(レイヤー2 = データリンク層で動作)
3. フレームとは何か
ネットワーク上でやり取りされるデータのまとまりを フレーム(Frame) という。
フレームには以下の情報が含まれる:
┌─────────────────────────────────────────────┐
│ 宛先MACアドレス │ 送信元MACアドレス │ データ本体 │ ... │
└─────────────────────────────────────────────┘
スイッチングハブは、このフレームの宛先MACアドレスを読み取って転送先を判断する。
4. スイッチングハブの転送処理(3ステップ)
① ラーニング(Learning)
フレームが届いたとき、送信元MACアドレスとそれが届いたポート番号を記録する。
パソコンA(MAC: AA:AA:AA)がポート1から来た
→ テーブルに「AA:AA:AA → ポート1」と記録
この記録表を MACアドレステーブル(転送テーブル) という。
② フラッディング(Flooding)
宛先MACアドレスがテーブルに登録されていない場合、送信元ポート以外の全ポートにフレームを送信する(全員に聞く)。
宛先が不明 → ポート1以外の全員に転送
これはリピーターハブと同じ動作に見えるが、あくまで「宛先不明のときだけ」の一時的な動作だ。
③ フォワーディング(Forwarding)
宛先MACアドレスがテーブルに登録済みなら、該当ポートだけにフレームを転送する。
「CC:CC:CC → ポート3」とわかってる
→ ポート3だけに転送 ✅ 他には届かない
5. コリジョンドメインとブロードキャストドメイン
コリジョン(衝突)ドメイン
昔のリピーターハブでは、複数の機器が同時にデータを送ると**データが衝突(コリジョン)**してしまい、通信がやり直しになっていた。
スイッチングハブはポートごとに独立した通信路を持つため、各ポートがコリジョンドメインを分離する。
リピーターハブ: 全体が1つのコリジョンドメイン → 衝突しやすい
スイッチングハブ:ポートごとに独立 → 衝突しない(全二重通信が可能)
ブロードキャストドメイン
「ネットワーク上の全員に届ける」通信を ブロードキャスト という(例:ARP要求)。
スイッチングハブはブロードキャストを同じLAN内の全ポートに転送する。 ブロードキャストドメインを分けたい場合は、レイヤー3スイッチやルーターが必要になる。
6. IPアドレスとの役割分担
| 項目 | MACアドレス(L2) | IPアドレス(L3) |
|---|---|---|
| 担当層 | データリンク層 | ネットワーク層 |
| 使う機器 | スイッチングハブ | ルーター |
| 範囲 | 同じLAN内 | 異なるネットワーク間 |
| 変更 | 基本的に固定 | 変更可(DHCP等) |
| 例え | マイナンバー | 住所(郵便番号) |
ざっくり言うと:
- 同じLAN内の通信 → スイッチングハブ(MACアドレスで判断)
- インターネットを越えた通信 → ルーター(IPアドレスで判断)
7. OSI参照モデルで見る位置づけ
第7層 アプリケーション層
第6層 プレゼンテーション層
第5層 セッション層
第4層 トランスポート層
第3層 ネットワーク層 ← ルーター(IPアドレス)
第2層 データリンク層 ←←← スイッチングハブ(MACアドレス)
第1層 物理層 ← リピーターハブ・ケーブル
スイッチングハブは レイヤー2(L2) で動作するため、「L2スイッチ」とも呼ばれる。
8. 発展:VLANとレイヤー3スイッチ
VLAN(仮想LAN)
1台のスイッチングハブを、論理的に複数のLANに分割する技術。 ポートやMACアドレス単位でグループを作り、グループ間の通信を制限できる。
例:会社のネットワーク
経営部門 VLAN10 ──┐
開発部門 VLAN20 ──┤ 1台のスイッチで論理的に分離
営業部門 VLAN30 ──┘
レイヤー3スイッチ(L3スイッチ)
L2スイッチの機能に加えて、ルーターのようにIPアドレスでの転送(ルーティング)もできる機器。 大規模なネットワーク(企業・学校など)で使われる。
まとめ
スイッチングハブとは、MACアドレステーブルを使って
フレームの宛先を判断し、必要なポートだけに転送する
レイヤー2(データリンク層) の中継装置。
キーワード一覧
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| MACアドレス | 機器固有の48bitのID |
| フレーム | L2でやり取りされるデータの単位 |
| MACアドレステーブル | ポートとMACアドレスの対応表 |
| ラーニング | 送信元MACとポートを記録する動作 |
| フラッディング | 宛先不明時に全ポートへ転送する動作 |
| フォワーディング | 宛先既知の場合に該当ポートだけへ転送する動作 |
| コリジョンドメイン | データが衝突しうる範囲 |
| ブロードキャストドメイン | ブロードキャストが届く範囲 |
| L2スイッチ | スイッチングハブの別名 |
| VLAN | 論理的にLANを分割する技術 |