本に書き込むのは、少し悪いことをしているような気がした。
子どもの頃から、そう思っていた。本は大切にするものだ。折り目もつけない。それがどこから来た習慣なのかは、もうよく覚えていない。ただ、気になった一文があっても、ペンを走らせることはしなかった。付箋を貼るくらいが、せいぜいだった。
だから、読みながら考えが走っても、どこかでうやむやになった。ページを繰るうちに、さっきの引っかかりがどこにあったか、見つけられなくなる。そういうことが、何度もあった。
Kindle Scribe Colorsoftを手に取ったのは、特別な理由があったわけではない。ただ、これならペンで書いても、本は傷まないのだ、と思った。それだけだった。
使ってみると、画面がおかしいことに気づいた。光っていないのだ。正確には、光源はある。だが、液晶のように自ら輝くのではなく、紙に当たった光のように、静かに反射している。長く読んでいても、目が痛くならない。夜中に読んでも、翌朝が重くない。
カラーになって、図の見え方が変わった。手書きのマーカー色がそのまま残る。本に引いた青い線と、赤い線が、違うものに見える。それだけで、読み返すときの手がかりが増えた。
書き込んだメモは、画面の中にある。だが、触れると硬くなく、少し沈む。ペンの先が紙に触れるときの感触に、似ている。
読みながら、考える。考えながら、書く。そのサイクルが、久しぶりに続くようになった。

