靴を、よく買い替えていた。
季節が変わるたびに、新しいものが気になった。底がすり減ったわけではない。ただ、引き出しの奥に前の靴が増えていく。どれも、一年か二年で飽きた。
ML574は、友人が履いているのを見たのが最初だった。地味だと思った。厚底でも、ロゴが大きく主張するわけでも、流行りの形でもない。それでも、普段は歩くのがそれほど速くない彼について行くのに、少し苦労した。
試しに買ってみると、靴を履いていることを意識しなくなった。足が地面と、適切につながっている感覚。それ以上のことが起きないし、それ以下のことも起きない。
ニューバランスが創業したのは1906年のボストンだと、後から調べた。最初は矯正靴のメーカーだったらしい。「履いた人の足の状態を整える」という考え方が、ブランドの出発点にある。ML574が登場したのは1988年で、以来ほとんど形を変えていない。変えない理由は、変える必要がないからだという。
今も同じ靴を履いている。気がつくと、二年以上が経っていた。次を探したいと思ったことが、一度もない。
靴に飽きないでいられる日が、こんなに続くとは、思っていなかった。
