プリンターの画面に、見たことのない表示が出た。
「メンテナンスボックスの交換時期です」。インクではなく、何かよくわからない部品の名前だった。年賀状を刷ろうとしていただけなのに、それ以上ボタンを押しても先に進まなくなった。
調べると、プリンターの中には、インクを吸い取って溜めておくスポンジのような箱があるらしかった。それが満杯になると、プリンター自身が「これ以上は無理です」と止まる仕組みだった。インク切れでも、紙詰まりでもない。存在すら知らなかった部品だった。
型番を検索してみると、うちのプリンターと同じ箱を使う機種が、他にもいくつかあるとわかった。似たような名前の機種が並んでいて、メーカーは細かく型番を分けながら、中身は共通の部品でまかなっているらしかった。知らなかっただけで、そういう仕組みで動いていたのだと思った。
純正のメンテナンスボックスを探すと、届くまでに数日かかると書いてあった。今すぐではないにしても、待ちたくはなかった。検索の先に出てきたのが、同じ型番に対応するという互換品だった。レビューを少し読んで、注文した。
届いた箱は、思っていたより小さかった。説明書通りに古いものと差し替えると、エラー表示はあっさり消えた。プリンターは何ごともなかったように、いつも通り紙を吸い込み始めた。
中身を交換しただけなのに、止まっていた時間が動き出した気がした。年賀状は、間に合った。
機械は、見えないところで、静かに限界を教えてくれる。
