鞄の底に手を入れると、いつも何かが絡んでいる。
充電器のケーブルと、マウスのケーブルと、もう使っていないはずの変換アダプタが、三つ一緒になって団子のようになっている。出張先で充電器だけを取り出したいだけなのに、引っぱった拍子に他のものまで一緒に出てきて、床に落とすことになる。そういう日が、月に何度かあった。
忘れ物にも、よく気づかなかった。家を出てから、モバイルバッテリーを置いてきたことに気づくのは、たいてい電車の中だ。鞄の中を手探りで確認することと、忘れ物に気づいて引き返すことを、何度繰り返しただろう。鞄の中身は増える一方で、整理する手段だけが、ずっと後回しになっていた。
どうにかしようと思ったのは、ある朝、会議の前にケーブルを探して五分も使ってしまったときだ。五分というのは、人前に出る直前には、案外長い時間だった。
選んだのは、コクヨのガジェットポーチだった。文房具のメーカーが作っているという安心感が、決め手のひとつだったかもしれない。Mサイズというのも、ちょうど鞄に収まりそうな大きさに見えた。
届いてすぐに、中の仕切りに何を入れるか迷った。充電器はここ、ケーブルはここ、と決めるまでに、思ったより時間がかかった。一度詰めてしまうと、もうそれ以外の置き方が考えられなくなる。
数日経つと、鞄の中で手探りをする回数が減った。ポーチを一つ取り出せば、必要なものは大抵その中にある。忘れ物も、出かける前にポーチの存在さえ確認すれば、もう安心できるようになった。
会議の前に、ケーブルを探すことはなくなった。
それだけのことだ。だが、それだけのことが、案外、大きい。
