テーブルの上に、リモコンが三つ並んでいる。
エアコン用、テレビ用、もう一つは何のためにあるのか、近頃は思い出せない。来客があるたびに、どれがどれかを説明する羽目になる。説明している間に、部屋はどんどん暑くなっていく。
暑さに気づくのが、いつも少し遅い。気づいた頃には、もう汗をかいている。窓を見ても、外の明るさだけでは温度のことまでは分からない。体が「暑い」と教えてくれる頃には、たいてい遅いのだ。
そんな夏を、何度繰り返しただろう。リモコンを探す手間と、暑さへの反応の遅さは、別の問題のようでいて、実はどこかで繋がっている気がしていた。
届いた箱は、思っていたより小さかった。設定はそう難しくなかったが、最初の晩、テレビだけがうまく反応しなかった。学習させ直すと、今度はちゃんと動いた。何ごとも、一度でうまくいくとは限らない。
SwitchBotのハブ3という、小さな画面のついた機器だった。エアコンもテレビも、これひとつに学習させてしまえば、あとはこの画面か、声をかけるだけで動く。机の上のリモコンは、いつの間にか引き出しの中に移動していた。
画面には、部屋の温度と湿度が、いつも静かに表示されている。暑さに気づくのが、前より少し早くなった。汗をかく前に、指が伸びる。それだけの違いだ。
リモコンを探していた時間が、まるごと消えた。代わりに増えたのは、画面をちらりと見る、数秒の習慣だけだ。
それだけのことだ。だが、それだけのことが、案外、大きい。

