ノートパソコンの内蔵マイクで話すと、いつも誰かに聞き返された。
「すみません、もう一度お願いします」と言われるたびに、声を大きくしてみたり、机から少し離れてみたりした。けれど直る気はしなかった。マイクの問題だとは、なぜか思っていなかった。
ゲームをしているときも、似たようなことがあった。仲間から「キーボードの音がうるさい」と言われたことがある。ミュートにし忘れて、関係のない雑談まで聞かれたこともある。声以外のものまで、全部拾われていた。
買ったのは、USBとXLRの両方につながるダイナミックマイクだった。黒いアームに支えられた本体は、思っていたより存在感があった。
使ってみてすぐに気づいたのは、声の周りの音が静かになったことだった。単一指向性というのは、口の前のことだけを拾い、それ以外をあまり拾わないという意味らしい。調べて初めて知った。キーボードの音も、エアコンの音も、以前よりずっと遠くに感じるようになった。
本体にミュートボタンがあることも、地味にありがたかった。咳をするとき、何かが落ちたとき、いちいち画面の小さなアイコンを探さなくていい。手元で押せば済む。音量を自分の耳で確かめながら調整できるのも、初めて使う機能だった。
会議の最後に、「今日は聞き取りやすかったです」と言われた。特別なことを話したわけではない。
それだけのことだ。だが、それだけのことが、案外、大きい。

