夜、仕事から帰ると、鍋を火にかける気力がないことが多かった。
圧力鍋というと、大きくて重くて、蓋の締め方も覚えなければならない道具だと思っていた。実家にあったものは、五徳の上でどっしりと構えていて、覗き込むには少し背伸びが必要だった。
小さいサイズのものがあると知って、置いてみた。届いた箱は、思っていたより低かった。テーブルに置いても、椅子に座ったまま蓋を開け閉めできる高さだった。
ダイヤルを回して、材料を入れて、ボタンを押す。それだけだった。カレーも角煮も、メニューを選ぶだけで、あとは待つしかすることがない。予約機能を使えば、帰ってくる時間に合わせて炊き上がるようにもできるらしい。
出かける前に材料を入れておいた日、家に着くと部屋に匂いが漂っていた。鍋を覗くと、もう出来上がっていた。保温のまま、12時間近く待っていてくれたのだと知った。
鍋モードにすれば、食卓に出したまま使えるとも知った。作る道具と、囲む道具が同じでもいいのだと、少し意外だった。
火にかける気力がない日は、まだある。ただ、鍋の前で立ち尽くす必要は、もうなくなった。
