深夜、ビデオ会議の途中で、画面が固まった。今日はこれで三度目だった。声だけが半テンポ遅れて届き、相手の表情が止まったままになる。「すみません、もう一度お願いできますか」と言うたびに、何かが少しずつ削られていく気がした。
ルーターのせいだと思っていた。何度も再起動した。設定もいじってみた。それでも直らなかった。原因は、机の裏で何年も埃をかぶっていた、もらいもののLANケーブルだった。
買い替えるとき、正直あまり期待していなかった。線が一本変わったところで、何が変わるというのか。届いた箱には、CAT7・10Gbpsという見慣れない数字と、日本企業の名前が記されていた。なぜ国内で作っているのかを調べると、規格通りの性能を、規格通りに出すことにこだわっているからだと知った。速さを誇るための数字ではなく、約束を守るための数字だった。
繋ぎ替えた夜、何も起きなかった。画面は固まらず、声も遅れなかった。拍子抜けするくらい、何も起きなかった。
何も起きないということが、こんなに安心につながるとは思わなかった。机の裏の、見えない場所で、ただ静かに役目を果たしている。それだけのことで、夜は少し穏やかになった。
